山本文緒さん原作のドラマ「あなたには帰る家がある」かTBSで金曜夜10時から放送中ですね。
山本文緒さんの作品が好きなので昔、読んだ記憶があるのですがドラマを観ても先が全然思い出せず、小説を再読してみました。あらためて、読んで思ったのはこの作品は1994年に発表されたものなのですが20年以上経っても全然古く感じられないということです。
本の中で、2013年に20年後のあとがきとして山本文緒さんがもう一度あとがきを書かれています。
その中で書かれていたことは、ポケベルを携帯電話にして表現と語尾を少し変えたくらいで他は変えていないということでした。
時代が変わっても男女の問題は変わらないということでしょうか?
しかも、20年前より女性が社会進出をしているはずなのに、問題となる部分はあまり解決されることなく時だけが進んでいるようにも感じました。
ドラマと小説では、設定が少し違っています。
ドラマでは、中谷美紀さん演じる佐藤真弓の年齢は、40代前半ですが小説では、20代後半です。
小説では、子供も1歳で子供が出来たことで佐藤秀明と結婚したので、結婚生活も1年ほど。新婚です。
仕事を辞めて家庭に入るのを希望して結婚したのですが、子育てや家事を自分一人ですることに不満な毎日。
小説の佐藤秀明は、映画が好きで映画配給会社の契約社員として働いていましたが、真弓との間に子供が出来たことで、家族を養うために転職します。
本当は、まだ子供を作る気も結婚する気もなかったのですが、真弓の思惑にはまってしまった形です。
「自分が、家族を守らなくては」と好きな仕事から義父の紹介の仕事へ転職、自分は家計を妻は家庭を守ると役割分担を決めています。
家事が苦手で、会話も出来ない赤ちゃんとの生活に孤独感を感じる真弓。家事や育児を手伝ってくれない夫に不満が募ります。
疲れて帰ってきても、食事はほとんどお惣菜。
部屋も散らかっていて不機嫌な妻がいる家にくつろげない夫。
なんだか、あまり幸せそうではないですね〰(^^;
もう一つの登場家族、茄子田家も原作の方が若く、30代の夫婦で、子供は小学4年生と2年生の二人の息子。そして、茄子田太郎の両親の6人家族。
ドラマ同様に茄子田太郎は、お客の立場になると横柄な態度をとるような、あまりよろしくない性格で、家族以外に好かれていないようです。ドラマでは、ユースケ・サンタマリアさんが演じていますが、小説の茄子田太郎はもう少しぽっちゃりしているようなイメージです。
奥さんの綾子は、ドラマの木村多江さんでイメージ通りなのではないかと思います。
この茄子田夫婦の一番の不思議は、どうしてあんなに綺麗な綾子が太郎と結婚したのかと、いうことだと思います。
お見合いして、意気投合お互い一目惚れしたと太郎は、言っていますが信じ難いです。
秀明とは、茄子田家の建て替えで、ハウジングメーカー営業の秀明と繋がります。
真弓は、ドラマでは旅行代理店勤務で修学旅行担当として、小説では生命保険の営業として茄子田太郎と繋がります。
ドラマでは、早々に玉木宏さん演じる秀明と綾子の不倫関係が真弓にバレてしまいますが、小説ではもう少し後になります。
小説では、保険の営業となった真弓が主婦ではなく自分が外で働き、家事を秀明に任せたいと思いますが、秀明は自分のように稼ぐことは出来ないと言いきります。
そこで、二人は3カ月の給料の額で勝負をして負けた方が家事、育児をすることに決めたのでした。
仕事に対する思いも違い小説の中の真弓は、苦手な家事ではなく、自分がメインで外で働くことを目標にしています。
ドラマの真弓は子供も大きくなって子育ても一段落。もう一度外で働いてみたい、そして家計の足しになれば良いなという感じです。
けれど、どちらも仕事が出来る訳がないと思っている秀明に認めさせたいと思っています。
そして、小説で二人の給料の額を左右する存在が茄子田太郎です。
原作では、二人が夫婦であることを太郎が知るのは最後のほうです。
太郎が家の建て替えを選ぶか家族の将来のために保険に入るかによって佐藤夫妻の勝敗が決まるのです。
再読の感想
初めは一番嫌なイメージだった茄子田太郎ですが、途中同情を感じる場面もあって存在が印象に残りました。
綾子との結婚の裏にも事情があり、自分とは正反対の相手と浮気されてしまう姿は、気の毒でした。彼なりに家族の幸せを考えていたのになあと。
原作の佐藤夫妻は、ドラマより年齢が若いことや結婚して間もない夫婦ということもあり(どちらかというと真弓が)ワガママにみえました。自分が望んで策略も加え、結婚したにも関わらず不平不満ばかりだったので。
でも、最後はたくましくなっていました。
ドラマの方は、結婚生活の歴史もあり一緒に子供も育ててきたので、原作の二人より夫婦の絆が感じられます。
綾子は、ドラマでも小説でも怖いです。一見、おとなしそうな彼女が思い詰めて行動してしまうところはホラーです。
小説はその後、何年かあとに二組の家族がどうなったのか覗いてみたくなる終わりかたでした。
ドラマと小説は、焦点を当てているところも少し違ってドラマならではのストーリーとなりそうですが、気になる展開になってきたので毎週楽しみに見ていこうと思います。
